命の声

命の声

ホーム JF共済について 命の声 第4号 「『備え』と『助け合い』が大切」

「『備え』と『助け合い』が大切」

全国共済水産業協同組合連合会 代表理事副会長
JF明石浦 代表理事組合長

戎本えびすもと 裕明ひろあき さん

兵庫県

■ 船体が大きく持ち上がった

 夜明け前、箱船に乗って海苔の収穫をしているときに、阪神・淡路大震災が起きました。船体がググッと大きく持ち上がり、スクリューが付いていないにも関わらず何かを巻き込んだような感覚がありました。しばらくすると無線の声が騒がしく聞こえてきましたが、「どこかで船の事故があったのだろうか」と気になりながらも作業を続けました。刈り取りを終えて箱船から船に戻ったとき、電話が鳴りました。「地震や、早く帰ってこい」。そこで初めて、兵庫県南部で大きな地震があったことを知りました。

 沖から陸を目指す途中、印象に残った光景があります。空が白むなか、明石西部を境にして姫路方面は明るく、神戸方面は真っ暗で、地震による停電の境目をはっきりと見て取ることができました。遠目には建物の倒壊はなく、最初の印象は「被害はそんなに大きくない」でした。しかし港に入った瞬間、大勢の人が毛布をかぶってたたずんでいる姿を目にして、事の大きさを実感しました。家族の無事を確認した後、加工場に行くと、海苔の原藻が入ったステンレス製タンクがいくつも倒れ、乾燥機が横に大きく移動していました。その他の漁業関連施設も被災し、使用できなくなりました。現在の漁協の建物やセリ場は震災の年に新たに建てたものです。

■ 「近くで寄り添う」が原点

 各地で頻発している自然災害から命を守るためには、「備え」と「助け合い」が大切です。明石浦は長い間、高潮対策が未整備でした。しかし2011年の東日本大震災、2013年にフィリピンで約8000人もの死者・行方不明者が出た台風30号などを経て、50年間進まなかった防潮堤建設への機運が高まり、2018年に着工、3年後に完成しました。
 ソフト面の対策では、全組合員に防災リュックを配付しました。また、漁家台帳をもとに、組合員の居住地が一目で分かる地図も作成しています。共済事業としての「浜のあんしんサポート運動」は、組合員とその家族の状況を丁寧に把握し、有事の際の「助け合い」に繋げる有意義な取り組みだと考え、実践しています。
 昔と比べて近所同士の結びつきが希薄になりつつあるからこそ、私たち漁協が持てる力を発揮し、地域の核になるべきです。そうした考えのもと、助け合いの輪を、浜の仲間を超えて地域全体に広げる活動にも注力しています。町内会や小学校の行事に参加したり、合同で防災訓練を実施したり、地道な活動を通じて地域と漁協の距離はだいぶ縮まったと感じています。「近くで寄り添う」というのは協同組合の原点です。また、明石浦のセリ場には女性も多く、協力しながら仕事をしています。これも協同組合のあるべき姿だと思います。いざというとき、事前の「備え」と日々の「助け合い」が必ず役に立つはずです。
 震災から30年が経ちましたが、被災当時の記憶や危機意識が薄れることはなく、「災害が起きたときにどうするか」を常に考えています。これからも地域に貢献しながら、「備え」と「助け合い」の大切さを伝え続けていきたいと思います。

「阪神・淡路大震災(阪神地域)」
平成7年(1995年)1月17日5時46分、淡路島北部を震源とするM7.3の地震が発生。国内で史上初めて「震度7」の揺れを観測した。都市部での直下型地震であったため、6400人以上の方が亡くなり、約25万棟の住宅が全半壊するなど、その被害は甚大かつ広範囲に及んだ。目立った津波は報告されなかったが、港湾施設や河川構造物が被災し、漁業にも深刻な被害をもたらした。

  • 海苔の乾燥機

    海苔の乾燥機

  • 漁家台帳をもとに、組合員の居住地が一目で分かる地図を作成している戎本さん

    漁家台帳をもとに、組合員の居住地が一目で分かる地図を作成している戎本さん

※所属・役職等は発行当時のものです。