命の声

命の声

「てんでんこ」

岩手県漁業協同組合連合会 代表理事会長

JF宮古 代表理事組合長

大井 誠治 おおい せいじ さん

岩手県宮古市

大井 誠治の写真

 「てんでんこ」は、岩手県三陸沖で明治29年、昭和8年に発生した津波災害に対し、当時から現代まで被災地で言い伝えられている教えであり、私からはこの言葉を『命の声』としてご紹介します。
 この言葉は、津波の時には「てんでに」(それぞれで)避難しなさいという意味であり、自分の命は自分で守ることを厳しく教えています。
 また、この教えは、地元漁業者全員が集団で同じように同じ場所に避難し、万が一その全員が呑み込まれることを防いでいる言葉でもあり、「てんでに」(様々な方向に)逃げることで誰かが生き残り、漁業や地域の暮らしを再興してくれるようにという思いがあるのです。東日本大震災においても、この教えにより多くの命が助かりました。しかしながら、逃げ遅れた方がいないかと迎えに戻った方々が流されてしまうこともあったのです。

 被災地の一つである釜石市の『釜石市民より「未来のあなたへ」10のメッセージ』を以下にご紹介します。

  • 大きな揺れや長い揺れを感じたら、あなたは、とにかく高いところへ逃げてください。
  • たとえ過去の津波が、いま、あなたのいる場所まで来たことがなくても、あなたは逃げてください。
  • 100回逃げて、100回来なくても、101回目も必ず逃げてください。
  • あなたが率先して逃げれば、多くの人の避難を促し、命を救うことになるでしょう。
  • 相手は自然。いつ、どこまでどれほど大きな津波が来るかはだれにもわからないのです。
  • 家族を信じて、みなが「命てんでんこ」で逃げてください。自分の命は自分で守るしかないのです。
  • 地震がおきたら、家族が別々の場所にいても探したり戻ってはいけません。
  • もし、大切な人の命を守れなくても決して自分を責めないでください。
  • やがて平穏な日常が戻ったとき、あなたはきっと気づくでしょう。自分が決して一人ではないことを、多くの人に支えられて生きていることを。
  • 未来のだれかが同じ思いをしないように、いま、あなたができること「避難を続けること」「備えること」「語り継ぐこと」。

<全国のJF組合員の皆さまへ>
 東日本大震災では、全国の組合員また漁業関係者の皆さまに大変お世話になり
衷心より感謝申し上げます。『この声』が恩返しのひとつになればと心より願っ
ています。

※所属・役職等は発行当時のものです。