命の声

命の声

ホーム JF共済について 命の声 創刊号 東日本大震災 「どう避難するか考えておく」

「どう避難するか考えておく」

福島・JF相馬双葉そうまふたば 職員

渡辺 武佳 わたなべ たけよし さん

福島県相馬市

渡辺 武佳の写真

 震災時は、JFの職員ではなく、同じ相馬市にある化学プラントの工場に勤めていました。
 工場は全ての従業員が3交代の約300名で、その日の出勤者が約100名位働いていたと思います。化学工場ですので地震が発生した直後は、ガス漏れや配管などの点検に加えて、閉じ込められた従業員がいないかなどのチェックが直ちに行われました。
 津波警報を受け工場の管理者から、高いところへ避難するよう指示が出され従業員のほとんどは屋上に向かいました。結果としては、この地区の津波は膝上くらいまでであり、工場の敷地内に浸水はあったものの、施設にいれば犠牲者が出る状態ではありませんでした。
 従業員には、沿岸に住んでいる方なども多くいて、周囲を見渡せた屋上で、心配した顔で津波の様子を眺めていたひとも多かったです。
 津波到達まで時間があったことから、駐車場の車を安全だと思われる西側(山側)に移動することになりましたが、構内ですら一斉に西側を目指したため道路が渋滞を起こしました。
 たとえ膝上といっても波が押し寄せる力は強く、乗用車を押し流す勢いは十分にあります。おそらく幹線道路などで数キロ続いた渋滞に巻き込まれた車は、行くも戻るもできなかったと思います。
 津波が襲うことなど日ごろから全く考えていなかった方なら、こうした時にどうすれば良いのかは分からなかったでしょう。少なくともこの屋上に留まっていれば無事にいられたこともです。
 災害への備えとは、どんな危険が考えられるのか、その場所に居た場合の避難ルートは、そして、どんなものよりも「命」が優先であり「家族や大切な方の安全を確かめる方法」を、予め家族や大切な方と十分に話し合いを行い決めておくことが何より必要ではないでしょうか。
 私は、この時家族と連絡が取れ、ありがたいことに皆が無事でした。
 今私は、JF相馬双葉の職員になり指導事業を担当しています。
 組合員の方々や家族の皆さんのために、また、この冊子を通じて全国の漁村の方々に、「どこにいたらどう避難するのか」そして、「災害のときにどうやって連絡をとるのか」を考え相談し、確認しておくことを『命の声』としてお伝えしたいと思います。

※所属・役職等は発行当時のものです。